ゼロクーポン債と利付債の仕組み 債券価格の変化と市場金利の関係

ゼロクーポン債と利付債の仕組み
ゼロクーポン債とは割引債とも呼ばれ、額面価格より低い価格で発行される金利が付かない債券です。
一般的な債券は、額面価格100円で発行され、途中の満期日までの間に価格が上下し、満期日には最終的に100円で償還(返金)されます。
つまり投資家が100円で購入した債券は、債券の発行体が倒産していない限り、満期日に100円で償還されるという仕組みです。
満期日までの間に金利を受け取れる利付債と、金利がつかないゼロクーポン債に分けられ、債券市場では利付債が一般的です。
債券のリスクは株やその他の資産と比べて低い特徴があり、債券の発行体が国内か海外か、日本円建てか外国通貨建てか(為替リスク)によって大きく変化します。
債券は途中売却せず満期日まで保有する事が一般的ですが、途中売却をする場合は、その時点の保有期間中の市場金利の変化によって、債券価格が下落している場合があるので、思わぬ損失を被る場合があります。
リターンの源泉は、債券価格、債券から受け取れる金利、外貨建て債券であれば為替変動の差になります。
市場金利が動くと債券価格も変化する理由
市場金利が上昇すると債券価格は下落し、市場金利が低下すると債券価格は上昇します。
発行された債券の利子率は、一般的に償還まで変わりません。
債券の利子率を2%とし、その間市場金利が3%に上がった場合、債券価格は下落します。
市場金利が3%にも関わらず、2%の金利しか受け取れない債券を購入するなら、価格を安くしなければ誰も買わない、という理由で債券価格が下がります。
これは流通している債券全体に当てはまります。
ゼロクーポン債のメリットとリスク

一般的に私達が購入できるゼロクーポン債は新興国通貨建てが多く、購入時の債券価格が大幅に安く販売されている事が特徴です。
ゼロクーポン債のリスクは数多くのリスク要因が存在しますが、為替変動リスクが主で、購入時の外国通貨為替レートと償還時(又は売却時)の為替レートの差が投資者の損益に直結します。
新興国の通貨の為替変動率は、取引量が多い米ドルやユーロといった通貨より、価格変動幅が大きいことが特徴です。
ゼロクーポン債の保有期間中の受取り金利は、年率0.5%位とゼロに近いものが多く、満期日まで保有すると債券価格が額面価格100円に向かって、大幅な上昇が起こり償還される性質があります。
ゼロクーポン債の満期時までの額面価格に向かう大幅な価格上昇が、為替変動リスク以上の恩恵をもたらし、投資者に高利回りを実現する可能性が高いメリットがあります。
実際の数字を追って計算していきます。
ゼロクーポン債の利回り計算

- 残存年数(満期までの期間)5年のゼロクーポン債を単価(価格)70円で購入し、満期日まで保有した場合の利回り計算、為替変動リスクを考慮しない場合(為替手数料や税金等を考慮せず)
70円(単価)→100円(5年後償還価格)(100円÷70円=1.428)≒+42%
1年あたりに直すと・・・+42% ÷ 5年 = +8.4%
為替変動による価格の変動を考慮しなければ、年率8.4%のリターンを享受できる事になります。
- 上記に新興国通貨建ての為替変動リスクを考慮した場合の利回り計算
購入時の時から満期時までの5年間に為替レートが50%下落した場合。
1年あたりに直すと・・・(+42% - 50%)÷ 5年 = -1.6%
購入時の時から満期時までの5年間に為替レートが30%下落した場合。
1年あたりに直すと・・・(+42% - 30%)÷ 5年 = +2.4%
購入時の時から満期時までの5年間に為替レートが15%上昇した場合。
1年あたりに直すと・・・(+42% + 15%)÷ 5年 = +11.4%
以上の様に、為替レートが半分になっても年率で1.6%しかマイナスにならないのです。そして、為替レートが上昇した場合は、債券と為替レート上昇の収益の両方からリターンを得ることが出来ます。
満期日において為替レートが下落した場合は、日本円に戻さず外国通貨のまま保有しておく事もでき、為替レートが上昇した時に日本円に戻す選択肢もあります。
ゼロクーポン債のメリットまとめ
為替レートの影響を考慮しなければ、年間8.4%のリターンを得る事が出来ますが、逆に、為替レートが毎年8.4%、満期日まで下がり続けなければ損失にはならないという事になります。
ドルやユーロなどの主要通貨に比べて、新興国通貨の為替レートが5年間で50%下落する事は決して珍しい事ではありません。
ですが、普通預金以上の利回りを確保出来れば良いとする条件であれば、リスクの高い新興国通貨の為替レートが、5年間で50%下落する可能性を考慮しても、ゼロクーポン債のメリットは大きいと判断できます。
ゼロクーポン債を買う際の注意点
上記では購入時の単価(価格)を70円で計算しましたが、単価が80円であったり償還価格100円からの割引額が小さい場合など、ゼロクーポン債それぞれによって単価が異なります。
割引額が小さければ上記で計算された利回りよりも低くなり、損失は大きくなります。
検討しているゼロクーポン債の単価と残存年数を上記要領で当てはめ計算し、利回りと損失額を確認してください。
外貨建てのゼロクーポン債を購入するため、日本円を新興国通貨に変え、償還(又は売却)時には新興国通貨を日本円に戻す必要があります。
その際に手数料(為替スプレッド)が発生します。
手数料率は通貨の種類や購入時の為替レートの変動率によって変化しますが、おおむね10%前後で、高い手数料率では15%位かかる通貨もあり、全体の利回りにどの位影響するかを認識しておく必要があります。
上記の例では、5年間の運用を想定しているので、10%の為替手数料は1年あたり2%かかることになり全体の利回りから差し引いた利回りが、1年あたりの純利回りになる事を認識しておく必要があります。
ゼロクーポン債は短期で売買を行うのではなく長期的に視野で保有する必要があります。
ゼロクーポン債の買い方
一般的な対面型の国内証券会社で取り扱っていますが、大手証券会社でもゼロクーポン債の販売量は多い訳ではなく、期間限定の募集である場合もあり、思うように買えない場合があります。
ゼロクーポン債を買う際は、対面型の証券会社よりネット証券を利用することをお勧めします。下記記事を参考にしてください。
総合ネット証券であれば取り扱っている債券の種類が豊富で、容易にゼロクーポン債を買うことが出来ます。
例として、SBI証券での買い方を記載しておきます。
口座を開設しログインしなければ購入確定画面の前まで見る事が出来ないので下のスクリーンショット画面を参考にしてください。




